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桂・カレッジ通信

学校長式辞(全文)

ただ今卒業証書を授与された39名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ところで、本日はコロナウイルスの流行があり、このような異例の卒業式を挙行せざるを得なくなりました。皆さんはさぞや断腸の思いと存じますが、どうか事情をくんでお許しください。

さて、皆さんは入学されてからの3年間、看護の基礎科目や専門科目を数多く学ばれました。さらに、実際の医療現場で実地に看護の技術を習得されました。日々努力を重ね、その甲斐があって本日入学された時の目標を達成されました。ここから皆さんのお顔を拝見していますと本当に成長の跡が見て取れます。皆さんの気持ちは満開の花を眺めるような晴れやかなものでありましょう。教員をはじめ職員一同を代表して皆さんの努力とその成果に対して心からお祝い申し上げます。また、今まで皆さんを支え、その成長を見守ってこられ、今日の日を心待ちにしておられたご家族の皆さんのお喜びもひとしおのことと推察いたします。

みなさんは、今日卒業されますが、4月からただちに看護師として働くことになります。わが国は、皆さんもご存じのように高齢化社会の中にあり、多くの高齢の方への医療が必要になっています。また、複雑で高度に産業化された社会である今日、従来にもまして心身にわたるいろいろな健康上の問題が増加しています。さらに、グローバルゼーションの波を被って、この1月から世界を震撼させ、日本もその渦中にあるウイルス感染のように新たな健康上の脅威が突然発生することがあります。このような状況の中で医療の必要性が一層増しています。このような時期に皆さんは、医療の専門家としての一歩を踏み出すことになります。医療の現場では皆さんの新しい力が加わることを心待ちにしております。

看護の仕事は、当然ながら病気を抱えて苦しんでいる人を対象とした仕事であります。この仕事は、皆さんも学ばれたように科学的にそして技術的に裏付けされて適切に実施されなければなりません。近年は医学が加速度的に高度になり、高度な知識と技術を迅速に用いることがますます要求されるようになっています。皆さんが本校で学ばれた知識や技術は、実践の場で必要とされる看護のほんの基礎であるにすぎません。これから現実の医療の現場でそれぞれの必要とされる知識や技術を習得せねばなりません。

本校では、自主的に学ぶ力を身につけることを教育の目的としてきました。皆さんはここで学ばれたことを基礎にして第一線の医療現場で評価される看護師となるため、あらゆる機会を捉えて自らの力量を高めるよう努力してください。皆さん、これまで以上に向上心をもち、今後も研鑽を積まれ、そして看護の専門家としてご活躍されることを心より願っております。

もっとも、看護の仕事は看護の知識や技術だけでは十分とは言えません。看護は個々の悩める人に対して個別的で具体的なケアを行うことであるからです。「患者はどのような病気を抱えているかを知るより、どのような患者がその病気を抱えていることを知るほうが大切である」という言葉があります。同じ病名の人の看護であっても、当然対応の仕方は様々であるのです。看護は、医学的知識や技術を媒介した対人援助学であります。対人援助学の根底には、人間というのは関係としての人間の存在があります。人間関係とは、一個人と一個人の、つまり主体と主体の関係であります。看護の対象は病を抱えて痛みや苦しみを経験している人であり、死を前にして不安な日々を過ごしている人であります。そのような人との関係の中で、そして、そのような関係として看護という仕事があるのであります。

そのような人への行為は、第一に早めにその人がどのような人であるかを知ることから始めねばなりません。そして、第二にその人の苦しみや不安を共感することが重要であります。相手の心のうちを慮り、寄り添うことです。そして、第三に悩める人の生そのものを尊重し、敬意をこめ、今ある最善の関わりを行う、このような姿勢が看護の基礎であると考えています。

ローマ皇帝であり哲人のひとりでもあったマルクス・アウレリウスは、「善い人、慎み深い人、真実な人、思慮深い人、率直な人、心の大きな人との名称を人からもらったら、他の名前をもらわないように注意せよ」と自省録に書き付けています。どうか本校の教育理念である「生命の畏敬、人格を尊重する精神」をいつも心の片隅において高い倫理性をもって、これからのお仕事を始めていただきたいと願っています。

世界は次々と新しいことが起き、その様相は変化しています。変化の方向がどのようなものであれ、皆さんのこれからは紆余曲折が予想されます。そのような事態に対処するためには柔軟性のある自由な精神を保つことが重要です。人とよく相談し、人の意見をよく聞き、自ら顧み、そして決めたことは責任をもって実行することが自由な精神の現れです。そのような精神もまた、人間力を備えた人間に必要なものでしょう。卒業後も看護の領域だけではなく、広く人間として社会人として責任をもって行動できるよう、一層、成長されることを希望しています。そして、仕事をする上で健康は大切です。くれぐれも健康に気を付けてご活躍ください。今一度、皆さんのこれまでの努力に敬意を表して心からご卒業を祝福しつつ、今後のご活躍を祈っています。

最後になりましたが、ご出席いただきました社会福祉法人 京都社会事業財団 会長 野口雅滋先生や学生の実習を受け入れてご指導いただいた京都桂病院の方々、さらに、残念ながら本日ご出席いただけなかった他の多くの諸施設の方々、また、学生に懇切丁寧にご講義いただいた外部講師の方々など、これら学生が卒業式を迎えられたのは、ひとえに皆様方のお力添えがあったからと深く感謝し、心からお礼を申し上げて、私の卒業式の式辞といたします。